(角田晶生 つのだあきお・予備海士長)
聞くところによると、最近自衛官が女性にモテているそうですが、その理由は東日本大震災(平成23年3月11日発生~)における献身的な復興支援だけではなさそうです。
現役当時、自分が勤務していた大湊(青森県むつ市)では
「地元で働きたい(≒出稼ぎに行かず、地元で暮らしたい)なら、自衛隊かホタテセンター」
と言われているように、極めて仕事が少ない=景気が悪い地域において、自衛隊は非常に安定した就職先として人気を集めています。
※そのため、たまに新町や田名部(いずれも地元の飲み屋街)に行くと、地元の民間人から嫌味を言われたものです。
しかし、ここ最近の集団的自衛権に関する閣議決定もろもろで、にわかに「戦争に行く」ことが現実味を帯びて来たようです。しかも、守るのは自分の祖国や故郷ではなく、不義の侵略に乗り出す同盟国(?)。
※もちろん、それだけではないでしょうが、自衛権の際限ない拡大解釈によって、その可能性がゼロとは言い切れません。実際イラク戦争(2003年)では、結局アメリカに引きずられる形で自衛隊を派遣しています。
よく「自衛隊が派遣されるのは後方支援のみ」という意見がありますが、戦場に前も後ろもありません(そもそも、敵の裏をかくのが戦術というものです)し、かつて「お金だけ出すのはずるい」と言われて自衛隊を派遣した経緯を鑑みれば、また「後方支援ばかりでずるい」と言われれば、最前線に自衛官を送り込むことになるでしょう。
家庭を支える父や夫、あるいは息子が戦地に行くとなれば、当然殉職(戦死など)する危険性も高まりますから、自衛官の大きな魅力である安定性が削がれ、今後はモテなくなってしまうかも知れません。
※私は既に愛妻がいるから困りはしませんが、お国のために奉公している有望な若者には、是非ともその使命を支える素敵な伴侶と巡り逢って欲しいと思います。
伴侶、と言えば女性を連想するのは私が男だからですが、防衛省のポスターをはじめ、自衛官を募集する媒体には、大抵女性(二次元・萌えキャラを含む)が起用されています。これを小林よしのり氏が痛烈に批判していますが、まったくご指摘の通りです。
【引用ここから】
自衛官募集では、AKBのぱるるを使ったり、募集ポスターに萌えキャラを使ったりしているのも気色が悪い。
嘘くさい広告で集めなければならないほど、募集は大変なのか?
有能な人材だけ集めればいいのなら、嘘くさい、甘々なポスターをつくる必要はない。
「国を守る覚悟のある人材を求む」と言えばいいではないか。
甘く媚びてるのは、騙して馬鹿も入れたいからだろう。
【引用ここまで】
徴兵制について/よしりんの『あのな、教えたろか。』
https://www.gosen-dojo.com/index.php?action=pages_view_main&page_id=906
正直なところ、自分の知る限り、「国を守る覚悟」をもって入隊してくる奇特な(むしろ変わった)方など、一握りだと思います。
それよりむしろ安定した職業だとか、貯金ができるとか、資格がたくさんとれるとか、任務で色んなところに行けるとか、あるいは女の子にモテる(逆に、女性の場合は幹部自衛官との結婚を狙える)とか、そういう私的欲望をキッカケに入隊し、厳しい訓練や管理された生活、理不尽な躾やワッチ(当直)もろもろを、どうにかこうにか乗り越えて現在に至る、という隊員の方が、遥かに多い筈です。
それでも、我が国の平和と独立を守って来たのは間違いなく彼らですし、一任期(平成19年3月26日~平成22年3月25日)でもその末端を担えたことを、私は心から誇りに思います。
※現在は予備自衛官として、年5日間の訓練を受けながら、いつか「お役に立つ」日に備えています。こちらは一任期満了(平成24年8月15日~平成26年8月14日)を控え、二任期目を心待ちにしています。
【予備自衛官】任期満了!継続任用を志願します。【角田晶生】
http://shinpu-nishitokyo.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-e009.html
むしろ口先では「命懸けで国を守る」などと勇ましく叫ぶ自称「愛国者」の方が、ここ一番で頼りにならないと思っています。
小林よしのり氏のブログでは「自衛官の応募が減って、もしも徴兵制が布かれたら、ネット右翼から優先的に召集すべき。当事者意識のない言論で国を誤らせないために(大意)」と締めくくっていますが、私は徴兵制よりも、あくまで志願制の上で、自衛官の誇り・使命を尊重する法整備を行うべきと考えます。
一言で表すなら「私たちが納得して戦い、死ねる大義を示せ」ということです。同時に「不義の戦=侵略はするな」とも言えます。
※ましてやアメリカのご機嫌取りなど、もっての外です。
また、招集通知には防衛大臣ではなく、最高指揮官である内閣総理大臣の肉筆署名と捺印(もちろんコピーとは言え)を、そして誠に畏れ多いことではありますが、天皇陛下の発せられるであろう開戦の詔勅につきましても、その写しなりとも賜れましたら、当家末代までの名誉として、懐中にご奉公致します。
そして何よりのお願いとはなりますが、国内外を問わず、戦地(防衛出動等の発令下)にて殉職した自衛官につきまして、靖国神社への合祀を心より希うものです。
自衛隊の主な行動/朝雲新聞社
http://www.asagumo-news.com/techou-pc2013/omonakoudou/omonakoudou2013.html
自衛隊に入って一番がっかりしたのが、この「殉職自衛官は靖国神社に合祀されない」という事実でした(入隊直後、分隊長に訊いたところによります)。
信仰上の理由で合祀されたくない方はともかくとして、身上調書には宗教を書く欄があるのですから、予め「殉職時の靖国神社への合祀を希望/否」を確認しておけばトラブルも起きずにすみます。
靖国神社の皆様に、胸を張ってご奉告し、そして「よくやった。褒めてやる」というお言葉を賜れましたら、拙い命にも奉げる価値があったというものです。
※もちろん、手柄を立てて戦争に勝ち、祖国を守り抜くのが何よりであるのは言うまでもありませんが。あまり死に急ぐと、勝さんに叱られてしまいます(『氷川清話』より)。
死を恐れる人間は、勿論談すに足らないけれども、死を急ぐ人も、また決して誉められないヨ。
https://twitter.com/KatsuKaishuBot/status/487917508117024768
閑話休題(かんわきゅうだい・話を元に戻すこと)。
しかし、小林よしのり氏の主張するように、言論に当事者意識が必要であることは、私も強く同意します。
「いざとなれば中国・韓国・北朝鮮なんて、ぼくらの強い自衛隊がやっつけちゃうんだから!」
ではなく、
「日本を守るために、私たちに出来ることは何だろう」
といった積極性が、我が国には最も欠けていて、求められています。
ま、いち予備自衛官があまり大きな口は叩けませんが、有事の際には、微力ながら喜び勇んで参ります。